「ケトジェニックダイエット」が注目される一方で、人類が飢餓を生き抜くために備わった「グルコジェニック」の仕組み。この生命維持に不可欠なシステムが、現代人が太る原因の一つになっている、という考え方があります。
原始時代には飢餓を乗り越えるための重要な機能だったグルコジェニックが、なぜ現代において体重増加に繋がってしまうのでしょうか?その背景にある現代人の食生活と、エネルギー代謝のミスマッチについて解説します。
グルコジェニックの働き:糖新生でエネルギーを確保
グルコジェニックとは、非糖質性の物質(アミノ酸、乳酸、グリセロールなど)からブドウ糖を合成する仕組みのこと。糖質摂取が不足した際、肝臓や腎臓で行われ、脳などブドウ糖を必要とする組織にエネルギーを供給します。
原始時代の人類は、食料が安定しない環境で生き抜くため、このグルコジェニックによって飢餓を乗り越えてきました。
現代人の食生活:糖質の過剰摂取が問題
現代の食生活は、原始時代とは大きく異なり、精製された糖質(白米、パン、麺類、砂糖、菓子類、清涼飲料水など)が過剰に摂取される傾向にあります。これにより、血糖値が急激に上昇し、インスリンが大量に分泌されます。
インスリンは、血糖値を下げる働きとともに、余ったブドウ糖を脂肪として蓄積する働きも持っています。この状態が慢性的に続くと、肥満へと繋がりやすくなります。

グルコジェニックが活発になる場面:現代人が太るメカニズム
現代人が太る原因としてグルコジェニックが関わるのは、主に以下のようなケースが考えられます。
1. 過剰な糖質摂取による血糖値スパイク
血糖値が急激に上昇すると、インスリンによってブドウ糖は脂肪として蓄えられます。しかし、血糖値が急降下すると、体はエネルギー不足を感じ、再び糖を求めるようになります。この時、体はグルコジェニックを活性化させ、筋肉などのタンパク質を分解してブドウ糖を作り出そうとします。
しかし、すでに食事から十分な糖質が供給されている場合、このグルコジェニックによって作られたブドウ糖は余剰となり、再びインスリンによって脂肪として蓄えられてしまう可能性があります。
2. 慢性的なインスリン抵抗性
糖質の過剰摂取が続くと、インスリンの感受性が低下する「インスリン抵抗性」が生じやすくなります。これにより、血糖値を下げるためにさらに多くのインスリンが分泌される悪循環に陥ります。
インスリン抵抗性の状態では、グルコジェニックが正常に抑制されにくくなる可能性があり、結果として血糖値が慢性的に高くなり、脂肪の蓄積を促進する可能性があります。
3. 極端な食事制限や運動不足による筋肉量の低下
極端な食事制限や運動不足によって筋肉量が減少すると、グルコジェニックの材料となるアミノ酸が不足しやすくなります。しかし、体はエネルギーを確保しようとするため、わずかなアミノ酸をかき集めてグルコジェニックを活性化させようとします。
この際、食事からの糖質摂取が依然として多い場合、グルコジェニックによって作られたブドウ糖もまた余剰となり、脂肪として蓄積される可能性があります。さらに、筋肉量の低下は基礎代謝を下げ、痩せにくい体質を招きます。
グルコジェニックは悪者?〜バランスの重要性〜
グルコジェニックは、人類が生き延びるために不可欠な生理機能であり、決して悪者ではありません。問題となるのは、現代の食生活における糖質の過剰摂取と、それによって引き起こされるエネルギー代謝のアンバランスです。
グルコジェニックが過剰に活性化する状況下で、依然として糖質を多く摂取していると、エネルギーが過剰となり、脂肪として蓄積されやすくなるのは自然な流れと言えるでしょう。

現代人が太らないためのヒント
現代社会で、グルコジェニックの働きを理解し、太らないためには以下の点に意識を向けることが重要です。
- 糖質の摂取量を適切に管理する: 特に精製された糖質の摂取を控え、血糖値の急激な上昇を防ぎましょう。
- バランスの取れた食事を心がける: 糖質だけでなく、タンパク質、脂質、食物繊維をバランス良く摂取することで、血糖値の安定や満腹感の維持に繋がります。
- 適度な運動を習慣にする: 筋肉量を維持・増加させることで基礎代謝が上がり、糖や脂肪を効率よくエネルギーとして消費できるようになります。
- 血糖値のコントロール: 食事の内容や食べる順番を工夫することで、血糖値の急激な変動を抑えましょう。
まとめ:現代の食生活を見直し、賢くエネルギーを使う
グルコジェニックは、人類が進化の過程で獲得した重要な生存戦略ですが、現代の糖質過多な食生活とのミスマッチによって、体重増加の一因となる可能性があります。
体のエネルギー代謝の仕組みを理解し、糖質の摂取量を適切に管理し、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけることが、現代社会で健康的な体重を維持するための鍵となるでしょう。グルコジェニックを理解し、賢くエネルギーを使う生活を送りましょう。
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