私たちの体の重要なエネルギー源である糖質(炭水化物)。しかし、現代の食生活では、気づかないうちに糖質を過剰に摂取してしまいがちです。では、糖質を摂りすぎると、私たちの体にどのような影響があるのでしょうか?
1.体重増加と肥満
最も直接的な影響の一つが、体重増加と肥満です。
糖質を摂取すると、体内でブドウ糖に分解され、エネルギーとして利用されます。しかし、消費しきれなかったブドウ糖は、中性脂肪として肝臓や脂肪細胞に蓄えられます。これが繰り返されることで、体脂肪が増加し、肥満へと繋がります。特に、清涼飲料水やお菓子に含まれる「単純糖質」は吸収が早く、血糖値を急激に上昇させるため、脂肪として蓄えられやすい傾向があります。
2.血糖値の乱高下とインスリンの過剰分泌
糖質を過剰に摂取すると、食後に血糖値が急激に上昇します。これに対応するため、膵臓から血糖値を下げるホルモンである「インスリン」が大量に分泌されます。インスリンは、血糖を細胞に取り込ませることで血糖値を下げますが、同時に脂肪の合成を促進し、脂肪の分解を抑制する働きも持っています。
この血糖値の急激な上昇とインスリンの大量分泌が繰り返されると、以下のような問題が生じます。
- 「血糖値スパイク」: 食後の急激な血糖値上昇と下降を繰り返すことで、血管への負担が大きくなります。
- インスリン抵抗性: 長期にわたりインスリンが過剰に分泌され続けると、細胞がインスリンへの反応を鈍くする「インスリン抵抗性」が生じることがあります。これは、より多くのインスリンが必要となり、やがて糖尿病へと進行するリスクを高めます。
- 眠気や集中力の低下: 血糖値の急激な変化は、食後の眠気や集中力の低下、だるさなどを引き起こすことがあります。

3.糖尿病のリスク増大
上記で述べたインスリン抵抗性が進行すると、膵臓がインスリンを十分に分泌できなくなり、血糖値が高い状態が慢性的に続く「糖尿病」を発症するリスクが高まります。糖尿病は、放置すると神経障害、網膜症、腎症などの合併症を引き起こし、重篤な健康問題に繋がる可能性があります。
4.中性脂肪の増加と脂質異常症
糖質を摂りすぎると、肝臓で中性脂肪の合成が促進されます。これにより、血液中の中性脂肪が増加し、高脂血症(脂質異常症)のリスクが高まります。脂質異常症は、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な心血管疾患のリスクを高める要因となります。
5.非アルコール性脂肪肝(NAFLD)のリスク
アルコールの摂取がないにもかかわらず、肝臓に脂肪が蓄積する「非アルコール性脂肪肝(NAFLD)」も、糖質の過剰摂取と関連が深いとされています。特に、果糖(フルクトース)の過剰摂取は、肝臓での脂肪合成を促進しやすいため注意が必要です。NAFLDは、放置すると肝硬変や肝がんへと進行する可能性もあります。
6.肌トラブルや老化の促進
糖質の過剰摂取は、「糖化(グリケーション)」と呼ばれる現象を引き起こします。これは、体内のタンパク質と糖が結合し、AGEs(最終糖化産物)という老化促進物質が生成される現象です。AGEsは、肌のコラーゲンを変性させ、しわやたるみ、くすみを引き起こすなど、肌の老化を加速させることが知られています。また、血管や骨など全身の組織にも影響を与え、様々な病気のリスクを高めます。
7.腸内環境の悪化
過剰な糖質は、腸内で悪玉菌のエサとなり、腸内環境を悪化させる可能性があります。腸内環境の乱れは、便秘や下痢といった消化器症状だけでなく、免疫力の低下やアレルギー症状の悪化など、全身の健康に影響を及ぼすことが指摘されています。

対策:賢い糖質摂取を心がけよう
糖質は、私たちの体にとって必要な栄養素ですが、その「量」と「質」が重要です。
- 糖質の量を意識する: 特に清涼飲料水、お菓子、加工食品などに含まれる「隠れた糖質」に注意し、摂取量を減らすことを意識しましょう。
- 「良い糖質」を選ぶ: 白米や白いパン、うどんなどの精製された糖質よりも、玄米、全粒粉パン、そばなどの未精製の穀物や、食物繊維が豊富な野菜、果物などを選びましょう。食物繊維は糖の吸収を緩やかにし、血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。
- 食べる順番を工夫する: 食事の際には、野菜やきのこ、海藻など食物繊維が豊富なものを先に食べ、次にタンパク質、最後に糖質を摂取することで、血糖値の急激な上昇を抑えることができます。
- 適度な運動を取り入れる: 運動は、摂取した糖質をエネルギーとして消費し、血糖値の安定にも役立ちます。
糖質の摂りすぎが体に与える影響を理解し、バランスの取れた食生活と適度な運動を心がけることで、健康的な体と生活を維持していきましょう。
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