健康や美容に関心のある方なら「AGEs(エイジスまたはエージーイーズ)」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは「Advanced Glycation End Products(終末糖化産物)」の略で、私たちの体を構成するタンパク質や脂質が、食事などから摂取した糖と結びつくことで生成される物質です。
AGEsは、一度生成されると体内に蓄積しやすく、細胞や組織に悪影響を及ぼすことで、老化の加速や様々な病気の引き金になることがわかっています。今回は、このAGEsの正体、体内で生成される仕組み、そしてAGEsの蓄積を抑えるための対策について詳しく解説します。
AGEs(終末糖化産物)とは?
AGEsは、タンパク質や脂質が、血液中に過剰に存在する糖(主にブドウ糖やフルクトース)と非酵素的に反応する「糖化」という現象によって生成されます。この糖化反応は、体内で自然に起こるものですが、血糖値が高い状態が続いたり、AGEsを多く含む食品を摂取したりすることで、その生成が加速します。
AGEsは、様々な種類のものが存在し、体内のあらゆる組織や細胞に蓄積します。そして、蓄積したAGEsは、以下のような悪影響を及ぼすことがわかっています。
- 細胞や組織の機能低下: AGEsがタンパク質に結合すると、タンパク質の構造や機能が変化し、本来の働きを阻害します。例えば、血管のコラーゲンがAGEs化すると、血管の柔軟性が失われ、動脈硬化を促進します。
- 炎症の誘発: AGEsは、炎症を引き起こす物質の産生を促し、慢性的な炎症状態を引き起こす可能性があります。この炎症は、様々な生活習慣病や老化現象の背景にあると考えられています。
- 酸化ストレスの増強: AGEsの生成過程や、AGEsが受容体に結合する際に、活性酸素などの酸化ストレスが増加します。酸化ストレスは、細胞を傷つけ、老化を加速させる要因となります。

AGEsが体内で生成される主な原因
AGEsが体内で過剰に生成される主な原因は以下の通りです。
- 高血糖状態の継続: 血糖値が高い状態が続くと、糖化反応が促進され、AGEsの生成量が増加します。糖尿病の方や、血糖コントロールができていない方は、AGEsが蓄積しやすい傾向にあります。
- AGEsを多く含む食品の摂取: 食品にもAGEsは含まれており、特に高温で調理された食品(焼き、炒め、揚げ物など)に多く含まれることが知られています。
- 体内で生成された活性酸素: 活性酸素もAGEsの生成を促進する可能性があります。
AGEsの蓄積が引き起こす可能性のある影響
体内にAGEsが蓄積すると、全身の様々な組織や器官に悪影響を及ぼし、以下のような病気や老化現象のリスクを高める可能性があります。
- 血管系の疾患: 動脈硬化、高血圧、心筋梗塞、脳卒中など
- 糖尿病とその合併症: 糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症など
- 骨粗鬆症: 骨のコラーゲンがAGEs化することで、骨の質が低下し、骨折しやすくなります。
- 認知症: 脳内のタンパク質がAGEs化することで、神経細胞の機能が低下し、認知機能の低下を招く可能性があります。
- 白内障: 眼の水晶体のタンパク質がAGEs化することで、透明性が失われ、視力低下を引き起こします。
- 肌の老化: 皮膚のコラーゲンやエラスチンがAGEs化することで、肌のハリや弾力が失われ、シワやたるみの原因となります。また、肌のくすみにも関与すると言われています。

AGEsの蓄積を抑えるための対策
AGEsの蓄積を完全に防ぐことは難しいですが、日々の生活習慣を見直すことで、その生成を抑制し、悪影響を最小限に抑えることができます。
- 血糖コントロールを徹底する:バランスの取れた食事を心がけ、血糖値を急激に上昇させる甘いものや精製された炭水化物の摂取を控えましょう。食物繊維を積極的に摂る、食べる順番を意識するなども有効です。必要に応じて医師の指導のもと、適切な血糖コントロールを行いましょう。
- AGEsを多く含む食品の摂取を控える:高温調理された食品はAGEsを多く含むため、できるだけ蒸し料理や茹で料理など、低温で調理された食事を選びましょう。焦げ付いた部分はAGEsが特に多いので避けるようにしましょう。
- 抗AGEs作用のある食品や成分を意識的に摂る:一部の食品や成分には、AGEsの生成を抑制したり、AGEsの働きを阻害したりする効果が期待されています。
- ポリフェノール: 緑茶、コーヒー、ベリー類、赤ワインなどに含まれるポリフェノールは、抗酸化作用とともに抗AGEs作用も期待されています。
- ケルセチン: 玉ねぎ、ブロッコリー、リンゴなどに含まれるフラボノイドの一種で、抗AGEs作用が報告されています。
- ビタミンB群: 特にビタミンB1やB6は、糖代謝に関わり、AGEsの生成を抑制する可能性が示唆されています。
- 食物繊維: 血糖値の急上昇を抑えることで、間接的にAGEsの生成を抑制します。
- 抗酸化対策をしっかり行う:活性酸素はAGEsの生成を促進するため、抗酸化作用のある食品(ビタミンC、ビタミンE、カロテノイドなどを含む野菜や果物)を積極的に摂取しましょう。
- 適度な運動を習慣にする:運動は血糖コントロールを助けるとともに、血行を促進し、AGEsの排出を促す効果も期待できます。
- 禁煙する:喫煙は、AGEsの生成を促進し、血管を収縮させるなど、AGEsの悪影響を増強する可能性があります。

まとめ:AGEs対策は、健康長寿のための重要な一歩
AGEsは、私たちの体を蝕み、老化や様々な病気を引き起こす可能性のある物質です。しかし、日々の食生活や生活習慣を見直すことで、その生成を抑制し、蓄積を防ぐことができます。
今日からAGEs対策を意識した生活を送り、体の内側から健康と若々しさを保つための第一歩を踏み出しましょう。